レスター伯の限界

なんもかんも政治が悪い......

かけがえのない作家と再会し、かけがえない作家と別れた春 ―『星界の戦旗Ⅴ』『苺ましまろ7』の発売と殊能先生の訃報によせて―

 ちょっと更新をさぼっていると新年度に突入してしまいました(挨拶)。

 

 ちまちまと消化していたので、小ネタ的な更新はそれなりに出来そうでも年度末の忙しさもあり、なかなかモチベーションが湧かず放置していたのですが、三月末に「まさか新刊が出るとは...」というマイ・フェイバリットな作品が立て続けに出版されたので三月のオススメ作品として紹介します。

 

①『星界の戦旗Ⅴ―宿命の調べ』

星界の戦旗V: 宿命の調べ (ハヤカワ文庫JA)

星界の戦旗V: 宿命の調べ (ハヤカワ文庫JA)

 本当に「まさか新作が出るとは...」「本屋で実際に手にとるまで信じねえ...」と思ってた星界シリーズの新刊が遂に本当に発売されました。長編としては8年強ぶり(気分的には10年ぶり)、最新の短編集である断章2巻からも6年ぶりという新作で(短編自体はDVD-BOXの付録としてちょくちょく発表されていましたが)、10年ぶりに出た同窓会で全く期待してなかった初恋の人と再会したような気分ですよ。

 

 星界シリーズと言えばアーヴ語」(森岡先生が創作したオリジナルの言語)や「平面宇宙航法」に代表される練り込まれた設定が魅力ですが、その反面久しぶりに読むには(確か最後に読み返したのは5年くらい前)なかなか大変だろうなあと思っていたのですが、ほぼ全ての漢字に降られたアーヴ語のルビを読んでいると高校生時代に星界の紋章に出会った頃の感覚がよみがえってきてすごくジーンときました。最近、小説家になろうでイチオシの戦記物である『レジェンド・オブ・イシュリーン』を読んでて、「銀英伝とか星界とか思い出すなあ」とか思ってたんですが、改めて本家の練り込まれた歴史・設定の深みを体感する事が出来て本当に大満足です。

星界の紋章読本

星界の紋章読本

星界の紋章ハンドブック (ハヤカワ文庫JA)

星界の紋章ハンドブック (ハヤカワ文庫JA)

 

*イシュリーンに関しては、今週末に行う予定の「なろう・2chSS」に関するUstで話題になると思うので、興味がある人はぜひ。詳しくはまたtwitterなどでつぶやきます。

【告知】4/6(土)小説家になろう&2chSS話ustream - 3LDS -Love,Like,Life!! 

 

 また、設定と並んで星界の魅力となるのはやはりラフィールをはじめとするキャラクターたち。5巻では前巻の最後で突然の危機にさらされた(本当にあのラストからよく10年待てたなとw)アーヴによる人類帝国の撤退戦が中心になるのですが、その中でアーヴの歴史・記憶・心性に関する踏み込んだ描写がなされています。皇帝世代(ラフィールの祖母)アーヴの誇りと歴史を受け継ぐラフィールと、そうした途の習慣に戸惑いながらも対応していくジント。根本こそは変わらないものの、これまで以上に困難な途に踏み出そうとする2人の関係を今後も見守っていきたいという気持ちにあらためてなります。

 

 もちろん、ラフィールとジント以外のキャラクターも懐かしく、サムソンさんやソバージュら古馴染みの連中は安定感があるし、ラフィールとはまた違った意味で試練を与えられる弟ドゥヒールにほのかな成長を感じたりと、最後に出てきておいしいところを持っている「スポールはやはりスポール」としか言いようがないし、10年経っても生き生きとしたキャラクターには相変わらず魅了されます。個人的にはエクリュアの出番が少なくて非常に寂しかった訳ですが、一言「殿下(フィア)」と発した声が脳内再生されて、もうそれだけでガッツポです。ラフィールの「馬鹿(オーニュ)」とあわせて、ブームになる前から確かに存在したツンデレとクーデレの極みはやはりたまりません。

 

 たとえ、10年という月日があったとしても 、忘れられない、いつまでも自分の中で大事な位置を占める物語というのもがあるのだという事を思い知らされました。あとがきでは次はもう少し早く続きをお届けしたいと書かれていましたが、10年でも20年でも待つので、ジントとラフィールの次なるステージを楽しみに待ちたいと思います。

 

②『苺ましまろ7』

 

苺ましまろ 7 (電撃コミックス)

苺ましまろ 7 (電撃コミックス)

  星界については1月末の段階で新刊発売という情報が流れてきていたので心の準備ができていたのに対して、ましまろに関しては発売日に唐突に「おい、新刊出たぞ!」と知りました。まあ、例えるなら、寝ている所に窓から美羽に突如奇襲をかけられたみたいなもんなので、実にましまろらしい4年ぶりの新刊でした。

 

 ここ最近、『日常』や『キルミーベイベー』など分類するならシュール系のコメディ漫画(アニメ)が(ボクの周りで)ブームになり、今年の冬クールにも『あいまいみー』なる超弩級のぶっ飛んだ作品が(ボクの周りで)爆発的な人気(DVD初版が700枚くらいらしいですが、そのうち3枚をいつもの敷居亭メンツが買っているという)を誇っていますが、個人的にはこの系譜の源流にあって最も好みなのが『苺ましまろなのです。

あいまいみー 【DVD】

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 そんなわけで、FXで有り金溶かしてでも読みたい新刊をゲットしたわけですが、こちらも相変わらず人のツボをどストレートについてくる面白さでした。本当に美羽は馬鹿でそれにちゃんと付き合って上げる千佳ちゃんはかわいい。キルミーの教室のように、ましまろの伸ねえ部屋のありそうで絶対にない歪んだユートピア感は本当に愛おしい

 

 7巻を読む限りでは、ネタを産み出してそれを漫画の型に落とし込むのに本当に魂けずってるんだろうなあと感じないでもなかったので、今くらいのペースでもいいので、ばらスィーにはいつまでも連載を続けてほしいですね。

 

殊能将之先生の訃報

殊能将之さんが死去。「ハサミ男」などのミステリー作家。ショックとおくやみの声 :にんじ報告

 この約一週間の間に本当に好きな作品と再会できたのを喜んだ一方で、最後にまさかの別れが待っているとは... 『ハサミ男』などで知られる殊能将之先生が2013年3月30日に無くなられたという訃報が入ってきました。

 

 青春時代に新本格、特に講談社のミステリで育った身としては、殊能先生は個人的講談社ミステリの後半を代表する特別な作家の一人で、清涼院流水後にバカミスと本格の中間を絶妙のバランスで描いてくれた愛すべき作家でした。個人的には特に、『黒い仏』における超能力バトルが本当に大好きです。麻耶雄高の系譜を感じさせる、ミステリに対するシニカルだけど根底に確かな愛を感じる作品群は今でも宝物です。 

黒い仏 (講談社文庫)

黒い仏 (講談社文庫)

 

 その一方で、遅筆・寡作が多いミステリ作家の例に漏れず、長編としては2004年のキマイラの新しい城を最後に殊能先生の新作は出ていません(ちょうど星界の戦旗Ⅳと同じくらいの時期です)。よくミステリ好きの友達と「殊能先生が新刊を出さないのは仕方ない。だって本業はワイドショーウォッチャー(日記でよく書いてた)だから(震え声)」みたいな話をしていたのですが、まさかこんな形で永遠に新刊を読めないんだと思い知らされる事になるとは想像だにしませんでした...

 

 実は『星界の戦旗Ⅴ』あとがきで、森岡先生が心臓の病気で入院して、生死の境をさまよったと書いてあったので、命があって、新刊を読めるっていうのがこんなにも幸せなことなのかと思い知らされたばかりだったので、今まで以上にショックな訃報になってしまいました。ご冥福をお祈りします。

 

 

 春は出会いと別れの季節、こんな感じで幸せと悲しみに包まれた2013年の春でした。あ、後、個人的には長い間密かにずっと応援してきた相沢舞さんのファーストアルバム『moi』がすごく良かったので、是非是非聞いてみてください。うますぎWAVEの頃からもい様の歌を聞いてきた身としては、言葉では言い表せないすばらしい出来のアルバムでした。

moi (初回盤)

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