レスター伯の限界

気付いたらVtuberになってた

美人であることの秘訣 ―『紫乃先生〆切前!』のすすめ―

きれいなおねえさんは、好きですか?

といわれたら、「もちろん大好きです!」と答えるわけですが、

そんな人たちに向けて、「美人」が一つのテーマになってる四コマ漫画

紫乃先生〆切前!を紹介して見たいと思います。

紫乃先生〆切前!(1) (まんがタイムコミックス)

紫乃先生〆切前!(1) (まんがタイムコミックス)

1.美人の作家を描く漫画としての魅力

主人公の紫乃先生は美人で評判の小説家です。

町内にファンクラブがあったり、作家の中にもファンがいたり、

さらにはその美貌で弟の同級生の女の子を虜にしてしまうなど*1

とても魅力的な美人キャラクターなので、まずそれだけで読むことができるのです。

美人を生かすバリエーションが多くて、コメディ漫画として良く出来てます


また、美人の紫乃先生とその弟のやりとりが中心になっていて、

色々大変だけど、やっぱり姉が大好きな弟と、

そうした弟を大事に思いながらも、ついついいたずらしてしまう姉という関係性なんかは、

本ブログでもプッシュ中の鬼灯さん家のアネキ』なんかともテーマ的にかぶってます*2


その他にも、途中から出てくる作家仲間の三儀先生とか好きなキャラも多いのですが、

個人的には編集の清野さんと紫乃先生の関係がツボです。

清野さんは敏腕編集者で、容姿も含めて出来るかっこいい男なんで、

紫乃先生も好意を抱いているこんちくしょうな訳です。


ただ、清野さんはその好意を積極的に利用するのですが、

それも紫乃先生の小説にほれ込んでいるからであって、

その意味では紫乃先生の最大の理解者でもあります。

美人さで多くの人を転ばせてる紫乃先生も、

「ハンサム=清野さん」に転んでいるという点も面白いのですが、

小説を二人で作り上げることで、

紫乃先生の美人さがより多くの人に伝わるようになっている構造はとても興味深いと思います。

2.紫乃先生と「美人のもと」

このように「美人もののコメディとして良く出来てる漫画」なわけですが、

そこで肝心になってくるのが、紫乃先生がどう美人なのかということです。


ここらへんは薦めてくれたいずみのさん(id:izumino)と色々と話をしながら考えてみたのですが、

個人的に連想したのが西村ヤスロウ氏のコラム『美人のもと

このコラムでは、美人の行動やしぐさが普通の人とどう違うのか分析されていて、

小さな所で積み上げられていく「美人のもと」によって、美人は美人たりうると書かれています。


それを考えていくと紫乃先生は単純に容姿がきれいだから美人なわけではありません

人に会うときは化粧をしっかりする、美人でいるためにエステに通うだけでなく、

小説のために古典を読むなど、自分の才能を磨くことも怠っていなくて

キチンと努力を積み重ねながら、『美人のもと』を増やして行くことができる人です。


しかも、そうした努力は紫乃先生にとっては特別な事ではなく、

空気を吸うように自然に出来ているのもすごく重要です。

その結果生まれてくる余裕が人間的な魅力をより高めていて、

美貌と合わせて、トータルで美人オーラを増幅しているような気がします。


参考:「美人すぎる小説家」の私生活/『紫乃先生〆切前!』(王嶋環)1巻―ピアノ・ファイア


また、こうした「美人のもと」という視点に関して言えば、

ちはやふる』における千早とお姉ちゃんの関係を考えてみるとわかりやすいかなと。

千早の美しさに関しては人気モデルである姉からみてもずば抜けているわけですが、

「美人のもと」を積み上げていない千早は、純然たる美人だから魅力的なのではなく、

競技かるたに打ち込んでいるのがりりしくていい訳です*3

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

ちはやふる (1) (Be・Loveコミックス)

3.美人を表現するということ

紫乃先生は自然に余裕をもって『美人のもと』を増やすことができているからこそ、

魅力的な美人であると書いてきたわけですが、

元々「美人」という言葉で連想されるもの、重視される要素は個人によってまちまちで、

誰もが納得する美人を描くというのはとても難しいことのはずです。


この点に関しては、ある意味「天才」を描写することの難しさとも似てるのかなあと思います。

「天才」もただ頭がいいだけでは天才なわけではないですし、

どことなく理解できないミステリアスな部分こそが「美人」や「天才」の魅力の一つなわけです。

森博嗣天才・真賀田四季を描くときに犀川先生にも理解できない才能の持ち主としていましたし。

すべてがFになる (講談社文庫)

すべてがFになる (講談社文庫)


その意味でコメディ4コマ漫画という形式をいかして、

基本的には「美人だ」ということを設定的に強調してそこは面白可笑しく描く一方で、

油断をしているとふとしたシーンで「美人」である所以がそっと提示されてハッとさせられる

そのバランスの妙によって、コメディでありながら説得力もある「本格美人漫画」だなあと感心させられるのです。

4.まとめ

表現の難しい美人というテーマを、

これまでの漫画とは一味違った手法で巧みに処理することで、

4コマコメディ漫画としての面白さを保持しつつ、

美人好きに突き刺さる漫画に仕上がっている『紫乃先生〆切前!』。

品薄状態が続いてて手に入れるのが難しいようですが、

「美人」と同様に苦労してでも手に入れる価値のある素晴らしい作品なのでぜひぜひ!

*1:元々伊勢さんは小説家としての紫乃先生のファンですが

*2:ちなみにうちのブログの検索ワードの解析結果をみると、アマガミとアネキが二大コンテンツなのです

*3:逆にモデルとして努力してるお姉ちゃんは「美人」なんですよね