『さよならフットボール』新川直司が描く新たな青春漫画の魅力 ―『四月は君の嘘』のすすめ―
どうも最近ブログにかけられる時間とエネルギーがなかなか絞りだせないのですが、
一方で、コンテンツはちびちびながら色々と消費しています。
そこである程度たまったストックの中から最近のおすすめを簡単に紹介したいと思ったのですが、
すべてをすっとばして衝動の赴くままに紹介します!
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1.隠しきれない傑作の予感
そもそも『四月は君の嘘』を読むきっかけとなったのは、
主人公はピアノを辞めた元天才ピアノ少年。かれがあるヴァイオリニストの少女と出逢うところから物語は始まります。かれはその鮮烈な少女に惹かれるものを感じるのですが、どうやら彼女はべつの少年を好きであるらしく、その恋は始まらないうちに散ってしまうことに。しかし、それでも少しずつ少年の想いは深くなってゆきます。
こう書くといかにも平凡なボーイミーツガールのラブコメディのようだけれど、少年の孤独と絶望、少女の魅力をさわやかに描きだす漫画力が素晴らしく、非常に読ませます。(中略)
そう、この『四月は君の嘘』には、かつて少女漫画がそなえていたような繊細さ、優しさ、爽やかさを感じます。少年漫画でもこういう作品が通用するということはじつに素晴らしいと思います。とにかく場合によっては今年のベストに並ぶかもしれないクラスの作品なので、ぜひ読んでみてほしいところ。
月マガ連載の『四月は君の嘘』が最高! - Something Orange
月マガ5月号から始まってる事に気づいてなかった自分を殺してやりたくなりましたね。
なんと言っても『さよならフットボール』は去年の個人的なベスト漫画ですから!
第三話だけ読んでも、海燕さんが書いてあるような魅力はびしびし伝わってきます。
繊細な真理や少女の魅力の描写という部分に関しては、
前作『さよならフットボール』の段階でも十分に発揮されていましたが、
今作ではまた少し違った青春の魅力を描いてくれそうな予感がします。
具体的には『挫折した才能のある男主人公の視点』と『恋愛描写』が加わった点です。
2.挫折する男主人公の視点による描写の深化
女子中学生が男子に混ざってフットボールをする『さよならフットボール』は、
主人公のんちゃんのキラキラとした側面を強調した青春漫画でした。
参考:フットボールには夢がある! ―新川直司『さよならフットボール』のすすめ― - レスター伯の躁鬱
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一方で『四月は君の嘘』には、のんちゃんを彷彿とさせる素敵なヒロインが登場しますが、
そこに、挫折を経験した男主人公の描写が付け加わっています。
『さよならフットボール』でも女子である事に起因するフィジカルの差がハードルとして描かれていましたが、
そこを乗り越えていく前向きな側面がより強調されたキラキラ感が作品の肝でした*1。
『四月は君の嘘』ではキラキラした女の子に対する挫折した男の視点が中心になるために、
キラキラだけでなくドロドロとした側面により光が当てられており、
より暗い根の部分を描く青春漫画として展開していきそうなのが楽しみなのです。
メインの三人のキャラクターのデザインが似通っているとはいえ、
『さよならフットボール』とは狙いが違うので単純に比べられない訳ですが、
こうした深化が『四月は君の嘘』という作品の魅力の核だと思われるので、
今後どこまで踏み込んだ描写が行われるかは気にしながら読んでいきたいなあと思います。
3.恋愛漫画としての魅力
そして『四月は君の嘘』は恋愛がテーマになっているのも注目です。
『さよならフットボール』ではフットボールに対する想いの強さもあり、
恋愛よりも大事な物を描くという側面が強かった。
のんちゃんがいくら魅力的でも、そこにガチの恋愛は入り込む隙が無かったのです。
一方で男視点かつ、挫折というテーマが入った『四月は君の嘘』では、
恋愛が物語の駆動力として無視出来ない物になってくるでしょう。
ボーイミーツガール、すれ違いを含めた三角関係といった典型的な構図の上で、
音楽の才能というもう一つのテーマと絡み合いながら、
どのように物語が展開していくのか楽しみでなりません。
海燕さんはさっくり終わるんじゃないかなと書いてましたが、
個人的にはある程度長く続けてほしいなあとは思ったりもします*2。
また、恋愛と才能というテーマもあって、
個人的には読んでいてどうしても羽海野チカ作品が浮かんできました。
テーマ的には『ハチクロ』の方がかぶる部分が多い気もしますが、
同じように男子向けの雑誌に掲載されていて、大学生ではなく高校生が対象になっている、
『三月のライオン』と比べながら読んでみても面白いかもなあと思います。
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まとめ:月マガ面白いね
しかし、最近の月マガは本当に面白いですねえ。
『capeta』や『修羅の門 第弐門』などがガツンと構えているだけでなく、
今月巻頭カラーだった『ましろのおと』も、
少女漫画的な繊細な描写と、音が聞こえてくる音楽漫画としての魅力が併存していて素晴らしい漫画で、
雑誌としての幅が感じられて充実感が半端ないですね。
後は『Dear Boys ActⅡ』がもう少しさっくり進んでくれればいうことないのですがw
参考:音で触れ合う心、溶け合う世界 ―『ましろのおと』のすすめ― - レスター伯の躁鬱
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