サブヒロインとしてのヒロインの在り方 ―『アマガミSS』全ヒロインレビューのすすめ 補論―
上崎さんまで含めた『アマガミSS』全ヒロインレビューを行ってきたわけですが、
ヒロインたちは自分のシナリオ以外ではサブヒロインとして登場します。
しかも、オムニバス形式をとっているために、
サブヒロインとして登場しても橘さんとフラグを立てることはありません。
そこで、全ヒロインレビューの締めに補論として、
メインヒロインとは異なるサブヒロインとしてのあり方を振り返ってみたいと思います。
参考:ヒロインと本気で恋しようじゃないか ―『アマガミSS』全ヒロインレビューのすすめ 前編―
ヒロインと本気で恋しようじゃないか ―『アマガミSS』全ヒロインレビューのすすめ 後編―
上崎さんと本気で恋しようじゃないか ―『アマガミSS』全ヒロインレビューのすすめ 特別編―
1.解放される前半3人
サブヒロインとしてのあり方を考えるときに、
前半3人と後半3人では少し傾向が違う気がします。
ヒロインレビューの時も書きましたが、
前半の3人はサブヒロインとしての在り方がタメにつながりにくいため、
解放されたという印象が強い気がします。
それが一番顕著なのは、もちろん言うまでもなく森島先輩。
応援隊長の応援、ベストカップルコンテスト、茶道部とのバトル……
はっきり言って印象的なシーンを上げていけばきりがありません。
後期OPには伝説のラブリーダンスもありますしねw*1
本編以上に振り回される塚原先輩の苦労がしのばれるというものですが、
壁を越えようとした塚原先輩をほっぽり出してサンタコンテストで優勝してこそのラブリーでしょうw
だからこそ自由な姿と対比すると、本編における繊細さがよくわかります。
また、薫は橘さんと恋愛フラグが立たないサブヒロインとしては、
徹底的に悪友の立場を貫いています。
紗江ちゃんのバイト関係を助けてあげたり、孤立した橘さんと絢辻さんをフォローしたりと、
「薫さん、かっけー」的な男気を見せるシーンが印象に残ります。
ただ、その分たまに出る可愛いカットがたまらんのですけどねw
この二人と比べるとどうしても地味な印象なのが紗江ちゃん。
基本的にサブヒロインとしては橘さんと絡むことはなく、
もっぱら美也、七咲の一年生トリオの会話に登場するだけなので、
本編の流れを考えたときに一番浮いている感じがします。*2
ただ、本編だと最後に行けばいくほど橘さんべったりになるのに対して*3、
独自の展開を見せてる分、美也や七咲と打ち解けてる感じが段々強くなってきていて、
紗江ちゃんの成長をひっそり感じられるのも面白いですね。
まあ、ラブリーのケースとは逆に、美也に持っていかれている感が強いのも確かですけどw
このように恋愛している時には全身全霊をかけていたのに対して、
サブヒロインとしては力が抜けて自然体の自分に戻っている感じ。
そうした自然体の姿を頭においた上でもう一度本編に戻ってみると、
ふとした所に新たな発見が見つかって惚れ直すことができますよ。
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2.積み上げられるイメージとカタストロフ
メインヒロインレビューの時にも強調しましたが、
後半の3人に関してはサブヒロインとしての描写が、
メインヒロイン時につながるタメとして機能するように想定されていたと思います。
例えば七咲の場合には、本編で十分に描ききれなかったツンな部分の描写が印象的です。
個人的にはラーメンプレーに呆れる冷めた目が大好きです(`・ω・´)
また、七咲の持つ幅の広さを感じさせてくれるのもサブヒロイン時の描写で、
塚原先輩といるときは後輩として、
美也や紗江ちゃんといるときは部活や家事をするしっかり者として。
サブヒロインとして一番多様な側面が描かれたのは七咲ではないでしょうか。
それに対して梨穂子はサブヒロインとしても基本的に変わりません。
常にマイペースに食べ物とダイエットの話題でいっぱいで、
紗江ちゃんとは違った意味で梨穂子空間が形成されて和みます。
ただ、梨穂子が他のヒロインと違うのは、
サブヒロインとしても橘さんへの好意がわかる描写がある点です。
他のヒロインが本編で恋に落ちるのに対して、
梨穂子は初めから好きという設定なので当然なんですが、
そうした細かい描写が梨穂子編前半の導入の成功につながった気がします。
そして最後に出てくる絢辻さんは徹底して白辻さんモードで通されます。
梨穂子とは逆に徹底的にためており、
それがキャラ逆転のカタルシス→最後の大団円につながるわけで、必要な処置だったと言えるでしょう。
まあ、それでもたまに漏れそうになる黒辻さん分にはドキドキでしたけどねw
前半3人が解放だったのに対して、後半3人は抑制の側面が強く出た描写が目立ちました。
この対照性がきちんと本編での恋愛を盛り上げるように機能したところが、
『アマガミSS』の構成の真髄といったところでしょう。
また、個人的に上手いなあと思ったのは、
前期OPが『i Love』であるのに対して、後期OPが『君のままで』であり、
「すべてわかりあえたら」という歌詞が象徴しているように、
サブヒロインとして描かれなかった部分が描かれることで、
ヒロインと橘さんはお互いを理解し恋に落ちていくのです。*5
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3.まとめ
全体的にサブヒロインとしてのヒロインの描写は記号的であったといえると思います。
例えば七咲ならツン(クール)、絢辻さんは優等生といった感じで、
キャッチフレーズにある様な典型的なキャラクター造詣で統一されていました。
それに対して本編で橘さんと恋愛するときには、
そうした枠を越えて全身全霊でぶつかっていく様子が描かれました。
『アマガミSS』における恋愛は決して気取っていたり、かっこいい恋愛ではありません。
恋愛を通じて自分の殻を突き破って成長するのはまさしく高校生ならではであり、
ドラマ性の高い『アマガミSS』という作品の魅力の土台になっているのだと思います。
そうした理念がサブヒロイン描写にまで行き渡っている点は本当に脱帽ですよ。
補論の補論:上崎さんの工作は存在したのか?
上崎さん編で披露された写真による引き離し工作が他のヒロイン編でも存在していたのかというのも、
興味深いテーマではあります。
この点に関しては、コメンタリーで平池監督が何らかの見解を示してくれると予想できるので、*6
それを待ってから考えてみたいと思います*7。
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*1:寺島もコメンタリーでOPの見所ですねっていってましたし
*2:サブヒロインとしての本領発揮は、美也編に期待といった感じでしょうか
*3:3話から4話にかけての紗江ちゃんの橘さんガン見感は半端ないですからねw
*4:このシーンは七咲に数学を教えてるシーンですが、絢辻さんは橘さんの横に『図解大相撲大辞典』があることをきっちり見つけているからこそ怪しんでいるわけです。見直して気づいたんですが、ここらへんの描写も本当に細かい
*5:その意味では薫はやはり後半向きのヒロインだったと思うんですよね…
*6:平池さんは重要なシーンの意図は結構話してくれるので
*7:個人的にはどっちでも大きな違いはないのですが…