音で触れ合う心、溶け合う世界 ―『ましろのおと』のすすめ―
音楽って不思議なもので、
すごさを言葉で説明するのってすごい難しいけど、
なぜか人と人をつなぐ力を持っているものだと思います。
そんな音の力を上手く漫画で表現した作品、
『ましろのおと』を本日はご紹介。
- 作者: 羅川真里茂
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/10/15
- メディア: コミック
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1.音で触れ合う心
音が聞こえてくる漫画といえば僕の中では『BECK』なんかが浮かんでくるわけですが、
『ましろのおと』もその類の漫画だと思ってもらっていいと思います。
もう絵からガンガンと津軽三味線の音が伝わってきて、
その時点で音楽漫画としては勝ったも同然といった感じです。
- 作者: ハロルド作石
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- 発売日: 2000/02/15
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ただ、『ましろのおと』の場合には音楽が聞こえてくるといっただけでなく、
津軽三味線という微妙なニュアンスを表現できる楽器がモチーフだけに、
バンド物以上に、「個人の音=心の機微」が細かく描かれています。
導入となるTACK0の段階ですでにテーマは明確で、
青森から東京に出てきた主人公の雪が、
初めて河原で三味線を弾くシーンがそのことを象徴的に表しています。
またTRACK0自体が音楽漫画の一話としては理想的な導入で、
雪を拾ったアイドルの卵、兼ホステスのユナさんの心の動きを描きつつ、
そこに雪の心の激しさとやさしさの両面を写しだし、
さらにうつりゆく景色の情景を描き出す三味線の音が絡んでいく。
その上でライブという音楽の醍醐味まで描かれるので、
音楽が好きならば確実につかまれること間違いなしです!
2.音で溶け合う世界
『ましろのおと』が面白いのは、単純に心の動きだけでなく、
音によって世界と世界が溶け合っていく点にあるのかなあと思っています。
これは学校編が本格的に始まる2巻以降特に顕著になってきていて、
三味線を通じて新たな世界になじんでいくことがテーマの一つになるわけですが、
その過程においてはクラスメイトの女子高生である結を通じて、
裏側からも二つの世界が溶け合っていく様が描かれていきます。
学校においても人を見下すような態度を撮っていた結は、
初めは雪の三味線を聞いても素直に受け入れられない。
しかし、自分の音に引きこもっていた雪が、
聞く相手を想定できるようになり*2、
悩みを乗り越え一回り成長した音を奏でられるようになると、
それ生で聞いた結は真の良さを身をもって体験します。
つまり雪の成長の過程において、
異世界におけるコインの表裏なキャラたる結も、
雪と同じように心を開いていく。
音を通じて二つの世界が溶け合いながら物語が進んでいく、
これこそが『ましろのおと』の魅力となっているのだと思います。
- 作者: 羅川真里茂
- 出版社/メーカー: 講談社
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3.少女漫画と少年漫画の間で
また、『ましろのおと』を語る上で注目しておいた方がよさそうなのが、
内面描写とか、モノローグの使い方とかに少女漫画っぽさを感じさせつつ、
あくまでも主人公の雪の成長を描くという点で少年漫画なのです。
この両者の溶け合う感じが最も明確に出ているのが、
2で説明した裏側のキャラたる結で、
雪と結の表裏の成長が少女漫画と少年漫画の邂逅だなあと思います*4。
- 作者: 羅川真里茂
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後、少女漫画家による少年(青年)漫画という意味では、
どうしても羽海野チカの『三月のライオン』と比べたくなってしまいますね。
「自分に閉じこもり気味な天才系の主人公、理想とする音に近づくという目標、異質な世界に溶け込むというテーマ etc.」
といった設定上の類似も感じますし、
だからこそ今後どのように違いが出てくるのか注目しながら読みたいなあと。
少女漫画と少年漫画の間の越境という視点もあって、
『ましろのおと』は幅広い人に読んでもらいたい。
- 作者: 羽海野チカ
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4.まとめ
音楽を通じた心と世界の交流というテーマで今回は紹介してみましたが、
普通に音楽シーンの描写力の高さだけでも十分に面白い作品です。
『ハレルヤオーバードライブ!』など、最近また面白い音楽漫画が増えてきていますし、
音楽の力を漫画を通じて感じてみてください。
本当に読んでるとライブに行きたくなる漫画ですよ!
ハレルヤオーバードライブ! 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
- 作者: 高田康太郎
- 出版社/メーカー: 小学館
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余談ですが、音をテーマにした作品といえば、
『スイートプリキュア』も楽しみですね(`・ω・´)
ラ♪ラ♪ラ♪スイートプリキュア♪/ワンダフル↑パワフル↑ミュージック!(DVD付)
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