レスター伯的2012年ベストエンタメ
12月23日に行われた、海燕さんのニコ生にて、「ゆるおた大賞」という形で2012年のベスト作品とは何かという話に参加してきた。(1週間後までは以下のリンクからタイムシフト視聴可能)
・『ゆるオタ残念教養講座』クリスマス直前ニコ生「決定! 第一回ゆるオタ大賞!」 - ニコニコ生放送
番組内では小川一水の『天冥の標』をレスター伯的ベスト作品として挙げさせてもらったが、それ以外にも語りきれなかった面白い作品に溢れた一年であった。
そこで、この記事では簡単にレスター伯的2012年エンターテイメントベスト作品をジャンル毎に発表してみたい。
①漫画
・『神のみぞ知るセカイ』
放送の中でも簡単に触れたが、漫画というくくりであれば、やはり今年のベストは『神のみぞ知るセカイ』だろう。元々ギャルゲを漫画でやるという野心的試みの漫画であったが、今年に入り女神編という形でその構造がより複雑かつ面白い物になってきている。
特にちひろ編&歩美編でのちひろは今年一のヒロイン力といっても過言ではない素晴らしさだった。元来モブ的ヒロインであり、主格のヒロインになり得ないはずのちひろの魅力を余すことなく描ききった作者には脱帽しかない。
現在、サンデー本誌の連載では世界観の核心に触れる話が展開されており、ギャルゲ漫画のフォーマットの限界をどこまでみせてくれるのか楽しみでならない。
- 作者: 若木民喜
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- 発売日: 2012/10/18
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・『ワールドゲイズ・クリップス』
二つ目は、既にこのブログでも記事にしたが、五十嵐藍の『ワールドゲイズ・クリップス』を挙げたい。詳細は個別記事を参照してほしいが、クソッタレな日常に対する諦観(世界の終わり)と女子高生というテーマを徹底的に描ききろうとする作者に来年も付き合っていきたい。
ワールドゲイズ クリップス (1) (カドカワコミックス・エース)
- 作者: 五十嵐藍
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同じクソッタレな日常に対する不満を、これでもかと凝縮して醜く描くのが『惡の華』。逆に、そんな日常のキラキラを描いたのが『四月は君の嘘』。
この対照的な青春の愚かさと美しさを描いた二つの作品は、今の時代の中学生のコアを真逆の方向から捉えている。是非、あわせてよんでほしい。
- 作者: 押見修造
- 出版社/メーカー: 講談社
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②アニメ
・『男子高校生の日常』
今年のアニメは粒ぞろいだった物の、これと一つ挙げるのは難しい。そんな中で、今年最も輝いていたアニメ監督を一人挙げろといわれると、一番に浮かんできたのが高松信司だった。
そんな高松監督が冬クールに作った傑作コメディがこの『男子高校生の日常』。元々原作のファンであったが、銀魂などで培った高松コメディの手法を使いつつ、あの男子高校生達の絶妙の雰囲気を完璧の再現。
『ジャイロゼッタ―』や『イクシオンサーガDT』もよかったが、文学少女やリンゴちゃん、そして女子高生は異常など、高松監督の個性が最も発揮され、しかもキャッチーだったのは『男子高校生の日常』だろう。
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・『ガールズ&パンツァー』
高松信司と並んで今年の代表する監督として浮かんだのが、やはり水島努。水島監督がすごいのは、コメディからミステリー、さらには青春群像劇まで、どんな作品でもきっちりとクオリティ・コントロールしつつ仕上げてしまう職人芸にある。
『じょしらく』や『another』もよかったが、やはり今年一番は『ガールズ&パンツァー』だろう。少女&ミリタリーという系譜と部活物的な空気感を融合させつつ、その枠に留まらない拡がりをもった名作だった。
横(チーム)と縦(学年)の両方で女の子達の関係性を拡張しつつ、魅惑的なカメラワークで戦車戦を描く。この萌えと燃え両面でのダイナミックな作劇が可能になるのは、水島努監督が確固とした視点を確立しているからである。とにかく、みててワクワクが止まらない素晴らしい作品だった。
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・『中二病でも恋がしたい』
この作品に関しては賛否両論もあるだろうが、『氷菓』と並んで、個人的には京アニが次のステップに踏み出すことを示した作品だったと思う。
極論すると「六花ちゃんかわいい」という点に尽きるのだが、この作品における中二病の脱構築は個人的には好意的に捉えたい。
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③小説
・『サクラダリセット』
今年完結した作品ということでいえば、個人的には『サクラダリセット』が圧倒的。既に『レスター伯の躁鬱』において作品の骨格については語っているが、この10年のループ物に対する新たな回答を示した上で、きっちり完結させてくれた。
運命に立ち向かうことを決断するのではなく、運命を引き受けた後に、世界のあり方を自らの倫理に基づいて選択することに重点を置く。これもまた、『あの丘の向こう』を見せてくれる物語に繋がる一つの萌芽的な作品だと思う。
・21世紀の『タイムリープ』になれるか? ―『サクラダリセット』のすすめ― - レスター伯の躁鬱
・ループという運命を変えるのではなく、運命を変えるためにループ(リセット)を選択する ―『サクラダリセット』5巻で見えてきた物語の構造― - レスター伯の躁鬱
サクラダリセット CAT, GHOST and REVOLUTION SUNDAY (角川スニーカー文庫)
- 作者: 河野裕,椎名優
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・『天冥の標』
放送中にたっぷり話したので、詳しくはそちらを参照してほしいが、小川一水というゼロ年代の日本SFを支えてきた作者による、その全てをぶつけて作られる10年代を代表する超弩級のSF叙事詩。
とりあえず騙されたと思って読んでほしい。日本のSF、ここにありである。
・ハードさとロマンが絡まり合う極上のSFを体感せよ ―小川一水『天冥の標』のすすめ― - レスター伯の躁鬱
天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈上〉 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 小川一水
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・『スカイ・ワールド』
今年の小説というと、商業作品よりむしろ「小説家になろう」の一連の作品群が浮かんでしまうのだが、そんな「なろう」のフォーマットを意識してプロ作家が作品を書いたであろうと思われるのが、この『スカイ・ワールド』。
今最も伸びている物語を作り出そうとする場の勢いと、これぞプロの技という巧みな仕掛けの両方を堪能出来る良作である。iPad miniのアプリ(BOOK WALKER)で読むことが出来る点もポイントが高い。
- 作者: 瀬尾つかさ,武藤此史
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④その他
やはり「小説家になろう」の作品を全く取り上げないというのは片手落ち。最近特に面白い作品が建て続けて上がってきている中で、特におすすめなのがこの『盾の勇者』。
作者の不安定さと成長の両立によって支えられた作品であり、まさに「なろう」を象徴する作品だが、確かなプロットの存在によって作品の壊死が防がれやすい構造になっているのが最先端だなあと思わせてくれる。
ここらへんの詳しい話は27日の「なろう」ニコ生で敷居さんがガッツリ語ってくれるだろうと思うので、乞うご期待。
・【MAD】三巡先へ(未定)【怜-toki-千里山編 episode of toki】 ‐ ニコニコ動画:Q
今年一番繰り返しみた動画ってなんだろうと振り返ってみると、やはりこの作品になるだろう。怜視点でアニメ版阿知賀編をダイジェスト的にまとめた作品であるが、それゆえに作者のセンスが如実に反映された良作。
咲MADは音MADやネタ系がメインであるが、こういうドキュメンタリー系の名作は、咲の物語としての底力も見せつけてくれる。
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・ゆいかおり&StylipS
今年一番聞いた音楽ってなんだろうと考えたら、ファルコムかゆいかおり&StylipSということにならざるをえない。
恋に恋する女の子のかわいさをこれでもかとアピールしつつ、最終的に二人の百合が最高だよねとなる「ゆいかおり」と、四人組グループアイドルとしてそれぞれの個性をぶつかり合わせる「StylipS」。「これはドッキュンですわ」。
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Step One!!(初回限定盤)(Blu-ray Disc付)
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・『Radio Cross』/『矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか』
今年は面白いラジオも多くあったが、中でも群を抜いて面白かったのは、やはりパイセン&あやねるコンビの『Radio Cross』→『矢作・佐倉のちょっとお時間よろしいですか』だろう。矢作パイセンのラジオ力・演技力の高さと、あやねるの百合力・フリーダムさ・ボッチ力の高さの融合。スタッフを含めて全力でラジオを楽しんでやろうという雰囲気が伝わってくるのが、ベテランアニラジリスナーにはたまらんものがあります。
インターネットラジオが本格的に普及し、映像付きで配信出来るようになることで生まれた、21世紀の楽屋落ち系統の最前線。それがパイセン&あやねるコンビのラジオです。
それでは皆さんご唱和ください、「さくらさん、ひくわー!フライアウェイ(ふぁさっ)」
・佐倉さんひくわー!とは (サクラサンヒクワーとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
咲の影響もあるが、ニコ生の普及もあって、今年一年はずいぶんプロ麻雀中継をみた気がする。そんな中でも、独特のトイツ理論と話芸によってファン達の心をつかんで離さないツッチーの存在も、個人的な今年のエンタメを語る上では欠かせない
つっちー動画をみて、みんなでリアルにSOA(そんなオカルトありえません)してみないか。
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⑤総合
・『咲』
今年のエンタメを総合的にみたら、やっぱり個人的MVPは咲をおいて他にない。アニメ、原作、SS、なんJ、pixiv、ふたば... あらゆるコンテンツ、場を通じて全方面から楽しませてもらった。
現在冬コミ用に咲のシェアード・ワールドに関するコピー本を作成中なので、是非その魅力の一端を味わうために、冬コミの敷居亭ブースに遊びにきてほしい(まだコピー本が締め切りまでに出来上がるかは確定していないが...)
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咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A(4) (ガンガンコミックス)
- 作者: 小林立,五十嵐あぐり
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・モバマス
時間でいえばこちらの方が咲よりも大きいかもしれない。とにかく、コミュニケーション・ツールとしてのモバゲーと、コンテンツとしてのアイマスの融合がこんなにも魅力的な世界に発展するとは一年前には全く想像出来なかった。
全力で楽しめば、それだけ楽しさが帰ってくる世界である。
THE IDOLM@STER CINDERELLA MASTER 012 多田李衣菜
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・なんJ
最後に、今年を振り返る記事においてなんJ(なんでも実況ジュピター)に触れない訳にはいかないだろう。野球版を初め、2chのあらゆる版から流れ込んできた植民者達による、21世紀ネット時代の新たなフォロンティアである。
咲もモバマスも、なんJという場があったからより一層楽しむことが出来るという事はキチンと評価しておきたい。