スペシャルウィークの「日本一のウマ娘」にこめられた2つの悲願―ウマ娘メインストーリー第一部にやられてしまった1人の競馬おじさんの妄想―
備忘録と夏コミの宣伝も兼ねてまとめておかないと...(挨拶)
2022/7/20にアプリ版ウマ娘のメインストーリー第一部最終章後編が配信されましたが、みなさんプレーされましたでしょうか?そして魂をもっていかれたでしょうか?
ストーリーはもちろん、細かいキャラクター描写、更に進化を続けるレースやライブ映像、そして史実の競馬とウマ娘というコンテンツの両方の歴史の重みを詰め込んだJCの最後の直線。僕自身は完全にやられてしまいました。
ストーリー自体の出来はもちろん、最後に仄めかされたウマ娘の存在についてなどTwitterやDiscordでも熱い感想・意見を沢山目にしてきたわけですが、僕自身は競馬おじさんたちとここ数ヶ月話してきたことを踏まえて一番感じたのは以下の一連のTwitterの投稿に集約されているかなと。
エルの凱旋門は悲願といより「いやいや夢でしょ」が「あれ現実だったのかも」みたいな雰囲気の中だったよなあと、当時見てる自分の中では。むしろエルの凱旋門とその後のJCを経て本当に日本の悲願になったんだって。
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
だからこそJCでの三宅さんの「日本総大将」って実況が意味を持つわけで、日本総大将って言葉がもつ意味が99年の秋競馬で、その歴史を丁寧に積み上げて描いたのが最終章であり、第一部なんだなって。あPが前にはなしてたやつ
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
だからシリウスにテイオーがここに入るとちょっとぼやけちゃうし(チームシリウスJC初制覇って実況までわざわざいれてるし)、逆にこの歴史のプロセスにおいて欠けているピースがローレルのフランス遠征でもあるよなと。で、そこをコミカライズなんですよね
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
個人的にストーリーを見ていて一番違和感というか、少しひっかかりを感じたのはエルの凱旋門賞を「日本の悲願」として表現していたことで、リアルタイムにエルのフランス遠征をみていた自分の記憶では、前年にシーキングザパールとタイキシャトルが短距離・マイルで海外G1を制したとはいえ、まだまだ中長距離王道路線での海外制覇、特にその最高峰たる凱旋門賞制覇は夢だよな...という感覚でした。
つまり、エルがサンクルー大賞を圧勝し、人気で凱旋門賞に挑み、最強の三歳馬モンジューと激戦を繰り広げることで、日本馬が凱旋門賞で勝つのは「夢」ではなく「現実」にありうることだと考えられるようになったというのが感覚だったわけです。
そして、その後のJCでスペがモンジュー以下世界の強豪相手に完勝し、名実ともに「日本総大将」として日本の競馬が世界に通用するんだともう一つの意味で見せつけたことで凱旋門賞が本当の意味で日本競馬にとっての悲願になったんだと。
そしてあPもつぶやいているように、2020年代の今、その後の20年の悲願への挑戦の歴史を言っているからこそ「悲願」として描いたことは決して間違っていないのだと。
今ウマ娘をやってる2020年代でやるから凱旋門が悲願なんだよな。伯爵の言う通りもちろん悲願であった部分もあるのだろうけど、俺ら一ファンからするとその頃はまだ凱旋門賞というのは悲願というには遠い世界の出来事すぎたところがある
— あいうえおさん (@aiueoP) 2022年7月20日
ただ、だからこそ現代で生まれたウマ娘という再構築において、凱旋門賞を悲願というのは正しいんだよな。なぜなら今は2022年だからだ
— あいうえおさん (@aiueoP) 2022年7月20日
エルコンドルパサーが凱旋門賞を「悲願」にしたっていうのはいいよな。俺らのネタにしていこう
— あいうえおさん (@aiueoP) 2022年7月20日
このように考えると、ウマ娘メインストーリー第一部というのはシリウスのメンバーのそれぞれの悲願、後悔、IFを描きつつ、最終的にスペによるJC制覇という形で締めくくり、日本競馬が世界の競馬に負けない地位を確立するプロセスを描くモノだったのだと改めて感じさせてくれました。
「日本一のウマ娘」になるということは、同時に世界に負けないウマ娘になるという意味でもあるんだということを日本競馬が証明すること、これが多分表のテーマだということ。
その一方で、このウマ娘の表のテーマをメインストーリーとして体験した受け手の側、特に僕自身がそうであるように90年代に競馬ファンとして自我を確立していったいわゆるダビスタ世代くらいの競馬おじさんにとっては、あの頃見ていた「自分たちの競馬の原体験」をもう一度体験させてもらえることで、競馬ファンとしての二度目の青春を謳歌するとともに、ウマ娘から競馬のファンになった新たな仲間達とSNSを通じて語り合うことが出来るという二つの意味での幸せな体験をできているというのがやっぱり大きいんだなと思います。このあたりはここ半年くらいの競馬おじさんたちが語る生放送を聞いてもらっている方には伝わると思うのですが。
やっぱり当時はリアルにいた身近の友達とは競馬の話ができたけど、90年代の競馬をみんなで(もう一度)語る経験をさせてくれたのが本当に競馬おじさん的にはウマ娘に本当に感謝している部分
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
冷静に考えると20年以上前の出来事をまるでリアルタイムかのように話せて、リアルではひ孫くらいまで走ってる馬たちの話ももちろんリアルタイムで見て話せる、この環境が出来たのがマジで神なんだよな
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
ただ、ウマ娘を通じてこんな幸せな環境が出来ていることをかみしめつつ、改めてメインストーリー第一部の構造を振り返ってみると、もう一つの裏のテーマが浮かび上がってくるのではないか。
そう、第一部の裏のテーマであり、ウマ娘というプロジェクトが抱え込んでいるであろうあまりにも壮大すぎるテーマの存在が。
度々書いてるけど、実は99年ってもう競馬ブームは曲がり角で、「この物語をもってしても競馬人気は回復しないのか…」というある種の絶望感とかもあったんよね。
— シバの殿下 (@Mahal) 2022年7月20日
その頃に、未来ではこの時代の語り部がまさか競馬擬人化ゲーム(女体化のおまけつき)となるなど、当時の俺たちにどう説明出来るのかw https://t.co/8mo7Rpihh8
現実の競馬において、第一部が描かれた90年代というのはダビスタやウイポなどを通じて僕らのような若い世代の競馬にのめり込む新たなファンが増えていった一方で、売り上げでみても、観客動員数で見ても第二次競馬ブームから徐々に徐々に衰退していく局面でもありました。
ただただ競馬を楽しんでいた当時の僕も、薄々感じないこともないくらいの感覚。上の殿下のツイートからも分かる様に、更に上の世代だとより強く感じていたのかも知れません。
この第二次競馬ブームの絶頂にいたのがオグリキャップと武豊であり、第一部のシリウスの物語はオグリ後に始まるわけで、僕がここで言いたいもう一つの裏のテーマ、それはオグリキャップ越え、つまり第二次競馬ブームを超える第三次競馬ブームへの挑戦だったのではないかということです。
裏で同人誌の作業チャットで話しながら、第一部の表のテーマは昼にもつぶやいたJCと日本競馬の世界への挑戦だけど、裏のテーマは有馬記念とオグリへの挑戦なんだよなって。そして常にその中心にいた武豊の物語
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
ユタカは第一部の期間に念願のダービーを勝ち、スペで名実ともに日本競馬のエースになった一方で、有馬記念は2度の差し損ね含めて勝ってない。勝ったのは第一部直前のオグリとなんだって
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
てことは、この裏テーマを考えると、ウマ娘の壮大なテーマが浮かぶよな。スペや98年世代が世界に挑んだように、ウマ娘が挑むのはオグリと第二次競馬ブームなんだよなって、それを超える第三次競馬ブームを作るって事だよな
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
世代によってちょっと違うけど、ダビスタ世代が多分中心だろうスタッフだと、第二次競馬ブームよりもその残滓のなかで育って、アレを超えられない中で自分たちの歴史を物語としてぶつけて第二次を超えようとしてるのではないかって。思い込みだけど
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
僕自身もオグリの有馬が最初に記憶にあるリアルタイムで見たレースだけど、完全にハマったのはテイオーの奇跡とブライアンからで、ダビスタと96年世代で完全に落ちた世代だからこそ、そうなんじゃ無いかって思いたくなるし、それに応えてくれるコンテンツだよ
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
オグリと共に有馬記念を制した武豊は、その後メジロマックイーンと天皇賞春を連覇し、スペシャルウィークで悲願のダービーとJCを制覇することでスペを日本総大将に導くのは第一部の表のストーリーです。その一方でマックでも、スペでも、もっというとマーベラスサンデーでも、武豊は有馬記念を勝ちきれませんでした。
ファン投票によって選ばれた馬が、年末の大舞台でぶつかる競馬界のお祭り、競馬ファンだけならず国民の注目を最も集めるレースといってもいい有馬記念。第一部のラストで再現された有馬記念のゴール後の様子とIFの展開。
ここまで考えるとウマ娘のセンターにスペシャルウィークが選ばれ、「日本一のウマ娘になる」ということの意味はきっと、史実におけるスペシャルウィーク(と98年黄金世代)が成し遂げた偉業を描ききるということだけでなく、スペシャルウィークと黄金世代も第二次競馬ブームの絶頂を産み出したオグリキャップに負けない凄い馬/ウマ娘なんだということを描ききってやると言う決意だったのではないかと...
ここまで来ると完全に妄想なのですが、でも、TLやYoutubeなどで見られるウマ娘とウマ娘をきっかけとしたリアルの競馬への熱狂の渦、おじさんも初心者もどちらも一緒に過去と現在の両方のレースに熱狂する様子。
やっぱりウマ娘の悲願は第三次競馬ブームなのではないか、そう言ってしまいたい自分が抑えきれなくなっても仕方なくないんです...
これ以上書くと止まらなくなりそうなので、ここら辺で抑えておきます。そしてこういったウマ娘と競馬に関する僕らの周りの人たち(いわゆる界隈)熱い思いについては、夏コミでごまちゃんと一緒に作っている同人誌に沢山収録されています。絶賛最後の追い込み作業中なので、完成した暁には多くの人に読んでもらえたらなと思います。僕自身は企画・編集など今回は裏方に基本は徹して原稿自体は書いてないので、ここに書いちゃいましたが。
ちなみに、この流れの中で、武豊は今年ドウデュースでダービーを制して凱旋門賞に挑みます。そして、ファン投票でオグリキャップの得票数を超え、グラスワンダーばりに宝塚記念を圧勝したタイトルホルダーも挑みます。また、スペの系譜を引くエフフォーリアは春の大敗を経て、秋にスペのように復活して日本総大将の系譜も継ぐことができるのか、有馬でタイトルホルダーと再戦することはあるのか。
第一部を読むことで現実の競馬もやっぱり更に楽しくなるじゃないですか(断言)
昨日の寝る前に呟いた裏テーマのオグリ超え、やっぱり改めて考えてもウマ娘が抱いてる1番壮大なテーマだよなあ。
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
過去と現在のどちらも肯定する物語。極めて現代的で壮大なサーガなんよ...凱旋門賞と第二次競馬ブームという二つの悲願
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日
ここまで考えるとスペの系譜のエフフォが秋に復活して秋天とJCを勝ち、有馬でタイトルホルダーとぶつかり合ったとしたらマジで昇天してしまうのではないか...
— レスター伯@最近Vtuber化した貴族 (@LeicesterP) 2022年7月20日